夏の終わりに
『夏っぽいことしたー?』
毎年この時期になると会話の始めはだいたいこのセリフだ。
社会人になってから『夏休みだぜー!いぇーい!』みたいなことは一切なくなった。きっと多くの人はそうだ。
海外のお父さんはこう言う。
『家族のために仕事してるんだ。休日はしっかり家族と楽しんじゃうぜ?』
そんな生活に憧れつつ、毎年しっかりと忙しい夏を過ごしている。
この夏僕は、空の広い場所に家を借りた。
静かで穏やかな場所でとても気に入っている。
タオルを首に巻いて部活にいく青年たち。
マンションで追いかけっこしてお母さんに怒られる少年たち。
縄跳びの難しい技に挑戦する女の子。
『旅行に行く!』という花屋のおじさんとおばさん。
(なんとこの花屋さんは1ヶ月も休み!一体どこに行ったのか聞きたい。)
小さな町に、みんなそれぞれの。たくさんの夏があった。
僕の小さな夏休み
ある夜、家の前に体を黒く光らせる物体がいた。
『ご、ゴキブリだ!』
そう思って思わず立ち止まった。
『そこをどいてくれ!なんでわざわざ俺の家の前に!』
しばらく様子を伺っていると、妙な感じがした。
『んん?ツノがあるぞ?』
カブトムシだった。
その夜は割り箸でつついて追いやってしまったけど、夏の思い出をくれたあのカブトムシにお礼を言いたい。
どうもありがとう。